劇場版 響け!ユーフォ感想考察 届けたいメロディ~サンフェスと駅ビルコンサート~
- この記事は、作品の具体的な内容に、深く、大きく関わります。
「バレは困る!」という方は、残念ですが視聴後にご足労いただければ幸いです。
- セリフはすべて聞き起こしです。
間違いもあるかと思われますが、ご容赦ください。
・音楽室
翌日から、あすかは消えてしまう。
久美子の隣には、あすかに代わり夏紀先輩が。
その譜面には、「吠えろ全国!」の文字
・音楽準備室
あすかが自分で閉ざした、渡り廊下のドア。
だから、晴香や香織のメールには応えない。
置き去りにされたままの、あすかの楽譜には、「めざせ全国」の文字。
「たぶん、家に置いておけないんだと思う」
駆け込んできた優子から、2人のもとへ驚きの知らせが。
どうやら教頭先生が、代理であすかの退部届を受け取ったらしい。
あくまでも、香織先輩への報告で駆けてくるというのが、なんとも優子らしい場面。
・音楽室
合奏練習。
「なんですか、これ。
みなさん、ちゃんと集中してます?」
手を挙げる優子。
「あの、あすか先輩の退部届、教頭先生が代理で受け取ったっていう話は、本当なんですか?」
「そのような事実はありません。
みなさんはこれからも、そんな噂話が1つ出るたびに、集中力を切らしてこんな気の抜けた演奏をするつもりですか?」
合奏練習を打ち切り、パート練に戻す滝。
ここからは部長の見せ場。
影のリーダー、事実上のリーダーが抜け、晴香が成長しようとするシーン。
滝先生がやってきて、はじめての全体練習のとき……
外れる音、グニャッとなる譜面……
あのときも滝は立ち去り、サンフェスに参加できないかもしれないという、危機が訪れました。
晴香が部員に翻弄され、翌日は自主練さえも休み。
結局は滝の主導で特訓した前作とは、ここからは異なります。
晴香は自分の楽譜の「全国!!!」と書かれた目標を見つめます。
それから、「みんな、少しだけ時間くれる」と言い、正面黒板前へ進み出る。
主張する晴香。
それに不満を言う部員。
そんな部員を、優しく抑える香織の協力。
部長の本心の告白。
「今度は私たちがあすかを支える番だと思う。
あの子がいつ戻ってきてもいいように……
お願いします」
深く腰を折る部長。
部長の演説シーン。
バックのメロディは、「響けユーフォニアム」のようです。
ふたたび響け、あすかのユーフォ。
この場面、噂を持ちこみ、混乱をもたらす役割を果たしたのは優子です
しかし、「みんなついていくつもりです」と声を挙げるのもまた、優子。
良くも悪くも、やはり優子は声が大きく影響力があるようです。
投げ出して去った滝。
そのあとを晴香が部長として、彼女らしいリーダーシップの取り方をしてまとめます。
バラバラになりそうな部員たちを1つにつなぎ止め、優子の発言のように、みんなの協力を取り付けます。
で、次はサンライズフェスティバルの代わりにあたるイベントです。
あのときは久美子が過去と向き合い、自分を見つめ、気づき、成長するシーンでした。
では、今回はどうなるのでしょうか?
・駅ビルコンサート会場
「さすが全国常連だけあって、堂々としてるね」
香織が強豪校を見つけ、感想を漏らします。
「でも、私たちも全国出場だよ」
それへの同意は声にせず、逆接で「でも」と返す晴香。
府大会、関西大会を勝ち抜けたことによる、自信もあるでしょう。
あすかの騒動を経て、あすかに頼れなくなったことで、自立した晴香の成長がうかがえます。
そしてそれは、部長だけではありません。
サンフェスで立華を見たときの吹奏楽部員たちとは、まるで違う反応です。
前後の演奏順を気にするとか、ほかの高校を気にしてビビっている部員はいません。
そこへ唐突に田中あすかが登場!
晴香は楽譜を手渡して、自分がソロを吹くことをあすかに告げ、「しっかり支えてね」と求めます。
・駅ビルコンサート本番
ソロに入る前に、あすかに目配せする晴香。
ソロが拍手で終わり、「どう?」とばかりに再び視線を投げる。
『あすかがいなくても、ソロも、合奏も、ちゃんとまとまってるでしょ?』
あすかへと、送られるメッセージ。
そんな晴香に手を広げ、「驚いた!」というかのように、おどけて答えるあすか。
部長の晴香が、駅ビルコンサートでソロパートを立ち上がって吹く。
それは独り立ちの比喩でしょう。
あすかが北宇治の吹奏楽部から、いなくなったことの変化の成果が1つ、ここにしっかりと生まれているのです。
「今日、雨が降っている」
それは1つの事実です。
それ自体には意味はありません。
それをどう感じるか?
それが意味です。
雨が降ったことで、作物が育つと喜ぶ人もいます。
雨が降って、マラソンが中止になって喜ぶ学生もいるでしょう。
けれどそれは1つの面でしかありません。
せっかくの屋外イベント、スポーツ観戦や運動会、フェスやお祭りなど……
楽しみが中止になって、困る人や、嘆く人もいるでしょう。
このように人によって、事実の意味が変わることがあります。
そして同時に、おなじ人やおなじグループの中でも、プラスとマイナスが同居することもあるものです。
あすかがほとんど部活に来なくなった。
それは事実で、仲間からすれば悲しいことで、寂しいことです。
そしてそれがマイナスだけかというと、そうでもないこともあります。
あすかが来ないことにより、晴香は頼りきりだったことを認めます。
頼る相手がいないということは、心細く、とまどうこともあり、上手くいかずいら立つこともあったでしょう。
あすかがいなくても、部長は晴香です。
部長として部員をまとめていかなくてはならないのです。
同時にそれは、ピンチはチャンスでもあるのです。
晴香だけでなく、吹奏楽部全体も、寄りかかる人がいなくなったことで、成長したのです。
立ち去った滝のあと。
自分の至らない点を認め、自分にも、部員にも、自立することを求めました。
全国大会出場を目前にした忙しい時期ですから、不満も出やすかったでしょう。
準備の時間も限られたものだったはずです。
それでも、あすか抜きでも、駅ビルコンサートを成功させたのです。
その事実とは、あすかが抜けたことがもたらした、成果といえるものなのです。
こうして駅ビルコンサートは、快晴の空で終わりました。
このあたりの流れは、これまでの展開と比較できるよう、意図的につくってあると思われます。
滝主導の特訓のかわりに、晴香の部長としての成長が。
時が過ぎ、成長を遂げた部員たちの様子を見せる、サンフェスのかわりの駅ビルコンサート。
明確に違いが示されていましたね。
バラバラでやる気も実力も伴わない、かつての北宇治の吹奏楽部では、ありませんでした。