響け! 心に!!

なんで「響いたのか?」をしちめんどくさく考えてみる、メンドウな人の考察。アニメ中心考察予定です。

劇場版 響け!ユーフォ考察 コンクール編~願いは口にしないと叶わない~

 

  • この記事は、作品の具体的な内容に、深く、大きく関わります。

  「バレは困る!」という方は、残念ですが視聴後にご足労いただければ幸いです。

 

  • セリフはすべて聞き起こしです。

   間違いもあるかと思われますが、ご容赦ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・部屋のシーン

 

目覚ましが鳴ると同時に止める久美子。

それくらい気合が入っている。

やはり久美子の本番はポニーテールと決まっているようです。

 

 

 

・電車のシーン

 

麗奈とばったり行き会います。

隣に座り、肘をつつき合う。

本番前の、いつもと違った雰囲気。

緊張感やもどかしさ。

早くはやく、と待ち遠しい気持ち。

 

くすぐったいような、そんな空気感が伝わってくるシーン。

 

 

 

・京都府吹奏楽コンクール会場

 

立華のあずさとは、手を振るだけ。

サンフェスのときとは、違う。

 

おなじ人物、おなじ本番前の状況でも、久美子はサンフェスのときとは違う、別の久美子なのです。

 

すでに「走り出し」、居場所がここにあるいま、「過去」であるあずさのもとへ行く必要はありません。

互いに手を振るだけで十分なのです。

それをあらわすように、「結ぶの手伝って」と言ってくる麗奈がここに。

かつてはいなかった特別な存在が、「いま」ここにいるのだから。

 

サンフェスのシーンでは、久美子は麗奈をチラッと見るだけでした。

その距離は遠く、目も合いませんでした。

 

しかし、この大会本番までのあいだに久美子と麗奈は大きく変わりました。

髪を触ってもよいほどに、お互いは近い関係となったのです。

 

 

 

・控室のシーン

 

「会場をあっと言わせる準備はできましたか?」

「……」

「初めに戻ってしまいましたか?

 私は聞いているんですよ。

 会場をあっと言わせる準備はできましたか?」

 

今度はそろって、「はい!」

 

 

言うまでもなく、目標決めのシーンとの比較。

あれだけバラバラだった吹奏楽部は、成長し続けてきました。

 

海兵隊のやり直し。

サンフェス。

オーディション。

再オーディションのゴタゴタ。

 

それらを乗り越えて、いまがあるのです。

 

 

「ではみなさん、いきましょうか。

 全国に」

 

そう言って、全国へと続く扉を開ける滝先生。

 

 

 

・本番前のステージ上

 

「あんなに楽しかった時間が、終わっちゃうんだよ。

ずっとこのまま夏が続けばいいのに」

 

表情に影があり、伏し目がちな先輩、田中あすか。

 

もう終わり。

そうはしたくない。

けれどもコンクールで選ばれず、部活動を終わらせられてしまうなら、それは仕方がない。

 

1人、『終わり』にするための言い訳を探し求める、あすか。

 

「何言ってるんですか、今日が最後じゃないですよ。

 私たちは全国に行くんですから」

 

そう言ってのける久美子。

 

あれ、あなた去年、「本気で全国行けると思ってたの?」と誰かに言ってませんでしたっけ?

そう突っ込みたくなります。

 

吹奏楽部に入るかどうか?

それすら秀一に、はっきり答えませんでした。

 

目標決めでは、手を挙げてさえいません。

 

サンフェスであずさと会い、もうスタートしていることにやっと気づきます。

 

麗奈と2人だけのあがた祭り。

 

再オーディションでは麗奈を支えます。

 

「上手くなりたい」と渇望し、橋の上で叫びを上げ、やっと中3当時の麗奈の痛みを理解しました。

 

こうした様々な体験を経て、黄前久美子は成長という変化を遂げてきたのです。

 

 

 

そしてこの物語のテーマが、ここできます。

久美子のモノローグ。

 

『願いは口にしないと叶わない』

 

自分はこれをテーマと受け取りました。

 

 

「全国に行けたらいいなぁ、中学生のころから、そう思ってた。

 だけど、それは口先だけの約束みたいなもので、本当に実現させようなんてこと1度も思ったことなかった。

 期待すれば恥をかく。

 叶いもしない夢を見るのは馬鹿げたことだって、思ってたから。

 だけど『願いは口にしないと叶わない』

 絶対、全国に行く!」

 

 

吹奏楽部に入ることをためらい、目標決めに手を挙げることさえもできなかった。

その久美子が……

 

「スタートしたかったの。新しく、最初から」と口にしたことで、自分が「スタートしている」ことに気づく。

麗奈の愛の告白を受け

再オーディションにまつわるゴタゴタの中で麗奈を支え続け

麗奈に愛の告白をして励まし

「悔しくて死にそう」なほど上手くなりたいという、身をよじるような思いを我が身で理解し

終わりを示唆する先輩に対して、もはや決定事項であるかのように「全国に行くんですから」と言ってのけるまでになった。

 

大きな成長を見せたのです。

 

 

こうして物語は、終わりを迎えます。

コンクールの結果は、当然中3のコンクールとは別のものです。

 

 

 

大団円のはずの、感動のフィナーレで、ただ1人。

 

あすかだけは、その顔を曇らせ、伏せてしまうのだった。

 

結果がわかる場面において、部員たちは大きく、あるいは伸びる、上がる……

そんな反応をします。

驚きや喜びで目を見開いたり、背筋が伸びたり、口を大きく開けたり……

 

1人だけの孤独なカットで、うなだれ、その目を閉じる。

それは、田中あすかただ1人だけなのです。

 

 

ということで、まずは「北宇治高校吹奏楽部へようこそ」が終わりとなりました。

引き続き、後編ともいえる「届けたいメロディ」をみていこうと思います。