響け! 心に!!

なんで「響いたのか?」をしちめんどくさく考えてみる、メンドウな人の考察。アニメ中心考察予定です。

劇場版 響け!ユーフォ考察 あがた祭り編~上の世界と下の世界~

 

  • この記事は、作品の具体的な内容に、深く、大きく関わります。

  「バレは困る!」という方は、残念ですが視聴後にご足労いただければ幸いです。

 

  • セリフはすべて聞き起こしです。

   間違いもあるかと思われますが、ご容赦ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

あがた祭り編~上の世界と下の世界~

 

・音楽室のシーン

 

サンフェスも無事に終わり、コンクールに向けての練習がはじまりました。

 

滝先生の口から、「今年はオーディションを行う」との唐突な宣言がされます。

 

サンライズフェスティバルをやり切った久美子のバックに広がっていたもの。

壁のように湧き立つ雲が知らせたこと。

 

それはオーディションによる選抜だったのです。

 

ここから先、オーディションが引き起こすドラマを中心にして物語は進みます。

 

 

 

・低音パートの練習教室

 

課題曲の御披露目。

みんなはラジカセの前に集合しますが、夏紀先輩だけは1人離れて寝ています。

 

 

 

・川、夕焼けのシーン

 

練習する秀一。

 

一緒に練習を、と誘うも、すげなく久美子に袖にされる秀一。

秀一はそこであきらめずに勇気を出し、あがた祭りに久美子を誘う。

 

「はぁ、なんで?」

 

素っ気なく断る久美子。

 

断ってから我に返る久美子。

 

「なんで?」

 

 

 

・音楽室のシーン

 

秀一をまったく意識していなかった久美子は、想定外の事態にとまどいを隠せません。

音楽室から逃げ出したはずなのに、なぜか廊下まで追いかけられてしまいます。

 

「ていうか、あがた祭り……」

 

ふたたび先日の話を持ち出され、あわてふためく久美子。

背中を向けて、秀一と向きあうことができません。

 

上手く自分一人で断り切れず、とっさに手近な人の腕を掴まえます。

 

「この娘と行くことにしてて」と、必死の逃げを打つ久美子。

そのときに掴んだ腕とは……

 

なんということでしょうか?

あの高坂麗奈のものだったのです。

 

ずっと苦手にし、避け続けていた高坂さんの腕を取ってしまい、「しまった!」という表情の久美子。

 

断るというより、逃げるような久美子に対比するかのように、堂々と、あっさりと秀一を誘う葉月。

助け舟とばかりに、それに乗っかる久美子。

 

「行ってきなよ、秀一」

「行っていいの」

 

「あっそ!」

 

目標決めとおなじように、決められない久美子でした。

けれど偶然に久美子が掴んだその腕が、今後に大きな意味を持つのです。

 

 

 

・あがた祭りのシーン

 

祭りを楽しむ吹奏楽部員たちのカット。

待ち合わせる葉月と秀一。

 

「なんで、ユーフォを持って、来なくちゃいけないんだー」

 

階段を登り切って、ボヤく久美子。

決められない久美子は、秀一の誘いをかわすことに成功したよう。

 

しかし、久美子のはっきり決められない部分は変わらない。

なぜかあべこべに、苦手な高坂さんとあがた祭りに行くことになってしまったのです。

 

「10分遅刻」

 

そこへ『全身、真っ白い姿』で待ち合わせ場所に来る、高坂さん。

「かわいくてビックリした」と、驚きを口から漏らしてしまう久美子。

思わず自分の格好を振り返り、足元を見つめてしまう。

 

白いワンピース。

腕の白いシュシュ。

白いヒール。

そして暗がりに浮かぶ、白い肌。

 

「行こ」

「どこ行くの?」

「大吉山、登るの」

 

 

 

一方……

葉月の告白にむせる、秀一。

秀一は葉月の告白を断る。

 

 

 

ネオンにきらめく川面。

ネオンのきらめきに表現されるもの。

それは祭りを楽しむ部員たちや、告白したり断ったりという葉月と秀一のような、青春の1ページの輝きをあらわしているのだろう。

 

かたやこの2人。

にぎやかで、きらめく祭りの日に……

スマホで照らして歩かなければならないほど暗い、夜の山道を登る高坂さんと久美子。

2人のまわりは誰もいない。

 

ほかの部員たちとは、まったく別の世界にいる2人。

 

「私本当はさ、前から思ってたの。

 久美子と遊んでみたいなって」

「えっ!!」

「久美子って、性格悪いでしょ」

「もしかして、それ悪口」

「褒め言葉。

 中3のコンクールのとき、『本気で全国行けると思ってたの?』って聞いたんだよ。

 性格悪いでしょ」

「いや、あれは純粋に気になったから。

 っていうかそれ、やっぱ悪口――」

「――違う。

 これは愛の告白」

「どう考えても、違うでしょ」

「でも私、久美子のそういうところ、気になってたの、前から。

 好きっていうか、親切のいい子の顔して、でもほんとはどこか冷めてて。

 だからいい子ちゃんの皮、ペリペリってめくりたいなって」

「それは、どういう?」

「わかんないかな?

 私の愛が」

「高坂さん、ねじれてるよ」

 

気になって意識していたのは久美子だけでなく、高坂さんもまた、おなじ。

 

「着いた」

 

そうこうしているうちに、やっと到着。

 

「綺麗だね」

 

東屋の屋根と樹木の間から見える『夜空』に、星が2つ輝く。

その『下』には、街の、祭りの、灯りが広がっている。

 

夜空の星は久美子と高坂さんの2人。

街の、祭りの灯りは他人のことをあらわしているのでしょう。

他人と違うことがしたかったという高坂さん。

それなのに街や祭りの灯りといった、『下』のことが気になる久美子。

 

「地面が星空みたいだ」

「あれ、お祭りの灯りかな?」

 

2人の間には、微妙なズレが存在します。

 

「お祭りの日に山に『登る』なんてバカなこと、ほかの人たちはしないよね」

 

「久美子なら、わかってくれると思って」

 

自分自身の想いを打ち明ける高坂さん。

いつもの黒いソックスではなく、真っ白な彼女は、久美子の前で自分の本音を包み隠さず語ります。

 

久美子の額に指で触れ、鼻筋を通り、唇へと降ろす。

「麗奈」と名前呼びに変えることを求める高坂さん。

 

久美子が「麗奈」と呼ぶと、風が吹き抜けワンピースの裾を揺らします。

 

「私、特別になりたいの。

 ほかの奴らと、同じになりたくない」

 

「だから私は、トランペットをやってる。

 特別になるために」

 

「トランペットをやったら特別になれるの?」

 

「なれる、もっと練習してもっと上手くなれば、もっと特別になれる。

 自分は特別だと思ってるだけの奴じゃない。

 本物の特別になる」

 

 

麗奈に本心を語らせる久美子は、麗奈にとって特別なのです。

「特別なんて、スゴイね」

「よくわからないけど、格好いいね」

そういう適当で、とりあえず的な発言は、久美子はしません。

疑問を知るために、「トランペットをやったら特別になれるの?」と問いかけるのです。

 

中3のコンクールまでの麗奈とは、もしかすると『自分は特別だと思ってるだけの奴』だったのかもしれません。

しかしいまは、『もっと練習してもっと上手くな』って、『本物の特別』を目指しているのでしょう。

 

 

「やっぱり久美子は性格悪い」

 

そう言って笑う麗奈は、とても輝いています

学校で見せる麗奈の姿とは、表情も、しぐさも、まるで別人のようです。

 

脱ぎ捨てられた2人の靴。

畏まるように整然と並べるではなく、かといってバラバラでもない。

こういった靴の並びは、いまの2人の関係、距離感を表しているのでしょう。

 

 

2人だけの演奏会。

 

「曲は中3のときやったやつ。

 送別会の」

 

久美子を真っ直ぐ見て、「好きなの」。

「わかった」

 

これまでのわだかまりという2人の過去を、送別会の曲で、文字通り送別しているのでしょうか。

あるいはここが、いまこの時が、「愛を見つけた場所」なのかもしれません。

麗奈が愛の告白をしたあと、ということもあるでしょう。

 

近い距離で並ぶ裸足の2人は、防御することなく、互いに自分をさらけ出しているという表現。

それはもはや、白いソックスでさえ邪魔なのです。

 

 

演奏する2人の曲をバックにして……

 

祭りを楽しむ部員たちや見回る先生。

泣く葉月。

慰めるみどり。

 

下のお祭りでは、麗奈と久美子とは別の世界があります。

 

切り絵のような美しいシルエット。

2人を後方から映すカットでは、街の灯りは2人の『足元』に、ほんのわずかしか見えません。

そして中央の樹々の枝葉の間の『夜空』には、星が2つ、寄り添い輝いているのです。

 

 

 特別……

穢れのない、純粋な……

それでいて漂う、中二病的パワーワードな雰囲気……