響け! 心に!!

なんで「響いたのか?」をしちめんどくさく考えてみる、メンドウな人の考察。アニメ中心考察予定です。

色づく世界の明日から 11話感想、考察

変化とは、必ず抵抗を受けるものです。

ストーリーとは、はじめと終わりで変わっていく変化のことです。

 

過去の世界へと、バスに乗ってやってきたはじめの頃の瞳美。

その様子はビクビクオドオドで、イラッとする人もいたことでしょう。

それほどに儚く不安げなキャラでした。

花火のように眩しく煌めく色さえ見えず、魔法が大嫌いで、クラスメイトとまともな会話1つもできない……

 

……ですがそれはもう、過去のこと。

 

過去の世界にやってきた瞳美は、ゆっくりと、確実に。

存在感を持ちはじめてきたのです。

部員たちと関係を築き、将には告白までされました。

それによってできた、あさぎとの軋轢もちゃんと向き合って和解。

唯翔とはトラウマの開示を互いに行い、衝突しながらも成長し合います。

 

その存在感はいま、魔法写真美術部の枠を越えようとしています。

マジカルアートイリュージョンという、絵の中に入って体験ができるという前代未聞の大仕掛け!

これが成功すれば、世間の話題、大きな噂になること間違いなしです!

そしてそれは、瞳美という個人の変化に止まらない、大きなインパクトになることでしょう。

 

 

 

学園祭を目前にして、校内ではあちこちで準備が進んでいます。

琥珀が自信満々にアピールするほどに、不安しかない先生たち。

 

「名付けて、マジカルアートイリュージョン!!」

「あんまり、無茶しないようにお願いしますよ」

 

 

 

魔法写真美術部でも、おなじように準備が進みます。

ここからはこれまでの変化が語られます。

 

「先輩が絵のこと相談してくれるなんて、初めてじゃないですか?」

「絵をやってくって決めたから」

 

「そこで一緒にあさぎのポストカードも販売したら?」

「うえっ、無理!

 ……じゃなくて、わたしも頑張ります!」

 

「私たちも一緒に、魔法の練習しておかなくちゃね、瞳美」

「頑張ろう!」

 

進路に迷った唯翔、踏み出す勇気の持てなかったあさぎ、魔法なんて大嫌いだった瞳美……

それぞれの物語での、それぞれなりの変化が順に提示されました。

 

帰る時間を迎え、片付け始める面々。

瞳美を追いかけて、あさぎが暗室へ。

 

「あれ?」

「どうしたの、あさぎ」

 

「突然、いなくなっちゃったんです」

「見間違いじゃないの?」

「ほれ、いるじゃん!」

 

「瞳美!」

「わたし、何してたんだっけ?」

 

「一瞬、時間が飛んじゃったみたい。

 変なの」

 

「時間が飛んだ……」

琥珀は1人だけ、部員たちとは違う反応です。

過去に飛んできた瞳美の時間が飛ぶ。

それはこれまでになかったことです。

 

 


帰り道。

届いたメールを見て、「時のあわい」と心の中でつぶやき、駆け出す琥珀。

 

*『あわい』とは、事と事との時間的なあいだのことのようです。

物と物、人と人、色の配色や取り合わせ……

などもあるようですね。

 

 

 

駆け出した琥珀のついた先は、魔法書を借りた店。

星砂時計をつくる仲介をしてくれた人のようです。

 

事情を話す琥珀。

 

「永続的な拘束力はなく、必ず歴史修正力の影響を受ける。

 それは対象となる人や物を旅先から時のあわいに引き込もうとする形で現れる。

 兆しが見え始めたら、早く手を打たないと時のあわいに閉じ込められてしまうんだそうです」

「できるだけ早く、元の時間に返してあげたいんだね」

「でも私、大きな時間魔法なんて、使ったことないんです。

 私がやらなきゃいけない。

 瞳美を助けてあげたいのに、できるかどうか不安で」

 

不安を訴える琥珀に、店主はヒントを与えます。

 

やり方がわかってるなら、あとは魔法力。

魔法使いと協力し合う。

できるだけ純度の高い星砂を。

 

 

 

どうやら時間魔法は、単純に効果切れで元の世界に戻れる簡単なものではありませんでした。

もっとずっと、危険度の高いものだったようです。

 

そうしたことを知りながら、過去の世界に送り込んだのは未来の琥珀ですから、責任を感じて不安や焦りを感じるのは頷けます。

ましてや1度も使ったことのない大きな時間魔法に、これからトライしなければならないのですから、プレッシャーです。

 

そうした琥珀の不安や焦りと、噛み合わないのがいまの瞳美です。

 

 

 

「帰るっていつ?」

「できれば早いほうがいいって」

「そんな急に、みんなとお別れだなんて」

「気持ちはわかるよ。

 でも早くしないと、瞳美がどうなるか」

「戻ったらもう、色を見られることもないのかな」

「ねえ瞳美!」

 

肩を掴む琥珀。

 

「私の話聞いてた!?

 このままだと瞳美が危ないの!

 時のあわいから戻れなくなって、消えちゃうかもしれないんだよ。

 私は絶対そんなの嫌だから! 絶対に!!」

 

 


自分の命や安全ということの心配より、この世界のみんなと会えなくなることを気にする瞳美。

 

瞳美にとってはそれは当然の心配です。

なぜならば、瞳美にとって未来の世界とは、帰りたくなるほど魅力的なものではなかったのです。

 

色も見えず、魔法が大嫌いで、友達もいなくて、うつむきがちに歩いていた世界。

 

その世界とは、いまの瞳美に比べたら、まるで死んでいるような世界に見えてしまうことでしょう。

未来の世界に帰っても唯翔はいませんし、色は見えません。

親しくなった部員たちもいません。

琥珀の存在は『おばあちゃん』ですから、友達とは言えないことでしょう。

 

 

 

「やっと友達もできて、唯翔さんの絵に色も見えて、それに……」

 

唯翔との想い出が回想されて、瞳美が唯翔を意識していることがわかります。

 

琥珀は父親と夜の海へ。

時間魔法に必要な星砂を集めますが、そこには厳しい現実が……

 

「これじゃ、全然足りない」 

 

 

 

翌日も学校では学園祭の準備が進みます。

台風接近のため、学校の放送で下校が促されます。

 

唯翔と下校する瞳美。

 

「この傘見ると……

 思い出すんです、あの日」

 

逃げ出した瞳美が落とした傘を、唯翔が追いかけて渡してくれたときの回想。

 

「これから雨が降るたびに、思い出すんだろうな、私

 忘れない、唯翔さんの……」

 

ふたたび、忽然と消える瞳美。

 

琥珀は部員達に瞳美に迫る危険を告白します。

1度ならず2度まで……

もはや隠せる状況ではありません。

 

「早くしないと、瞳美が時のあわいに引き込まれて、2度と戻ってこれなくなるかもしれない!」

 

必死に探す部員たち。

それでも見つかりません。

 

「昨日瞳美が消えたときは、おなじ場所にまた立ってたんだよな!」

 

駆けつけると、まるで葬儀を思い出させるような花々に囲まれ、瞳美は眠っていたのです。

 

 

 

瞳美は琥珀の家へ。

心配する琥珀と、琥珀を心配する琥珀のおばあちゃん。

 

「みんなの力を借りればいい。

 瞳美を助けたい人たちと協力すれば、大きな魔法をきっと成し遂げられる。

 あなたならできるわ、琥珀」

 

琥珀は励まされます。

ここでも古本屋の店主とおなじように、おばあちゃんからもアドバイスを受けます。

なにかを成し遂げるには、たいてい条件があるのです。

年長者や権威からの協力や助言。

みんなの協力。

そして本人の努力です。

 

 

 

右下がりの不穏なタイトル。

 

第十一話

欠けていく

 

 

 

ベッドの上で目覚める瞳美。

左腕にはリボンが巻かれています。

それは琥珀の腕へとつながって縛られているよう。

 

瞳美がどこかへ行ってしまわないようにという、不安な琥珀の気持ちの表れでしょうか。

 

瞳美は自分が消えたということについて、なにも覚えていません。

 

「大事な話があるの」

 

 

 

学校で琥珀はみんなを集め、決意を語ります。

ここでの話は、目覚めた瞳美にした『大事な話』とおなじ内容でしょう。

 

「瞳美を未来に帰す時が来たんだと思う」

 

「俺たちにできることは?

 瞳美のためだろ

 手伝うよ」

 

星砂集めを頼む琥珀。

新月の夜、瞳美を送り帰すことに。

 

「それって、いつ?」

「明後日、後夜祭の夜」

 

明確にこの世界の終わる時間が示されます。

 

 

 

「明後日って、早すぎませんか?」

 

あさぎはあまりにも突然すぎて、別れを受け入れられません。

 

『安易に戻ってはこれない』ことが琥珀から語られ、本当に最後の時間だと告げられました。

辛いことを受け入れるには、個人差がありますが、時間も必要なものです。

受け止めきれず、1人部室から去るあさぎ。

 

 

 

夜になり、瞳美のシーンへ。

瞳美は心配してくれる家族の温かさに触れます。

 

一方の海岸では、星砂を集める部員の元へあさぎが駆けて来ます。

『瞳美のために』と1つになる部員たち。

 

「明日は絶対に、泣かないように!

 最高の文化祭になるように!」

 


瞳美は海岸まで来て、それを覗いています。

しかし、みんなの前へと顔を出すことができません。

なによりも瞳美自身が、帰る覚悟ができていないのですから。

 

「わからない、まだ、どうしたらいいのか

 みんなが笑ってくれても、私まだ、全然……

 新月が、来なければいいのに」

 

立ち去る瞳美。

 

 


みんなの協力で集めた星砂を店主に渡し、星砂時計の目処もつきました。

こうして『瞳美以外の準備』は整ったのです。

 

 

 

準備のできていない瞳美は、屋根裏部屋にこもっていました。

唯翔の部屋の灯りが灯ったのを見るや、紙飛行機を追って魔法で飛ばします。

 

飛行機が届いたことを、灯りを点けたり消したりする事で確認し合う2人。

 

2人はもう、動き出さずにいられません。

 

瞳美は机に向かい、言葉を記して2通目を飛ばします。

しかし飛行機はなぜでしょうか?

唯翔の部屋へと想いを乗せて、真っ直ぐに飛んではいきません。

 

慌てて紙飛行機を追いかける瞳美。

 

紙飛行機は唯翔の部屋ではなく、唯翔自身へと向かっていたのです。

じっとしていられずに走って来た唯翔の胸に、飛び込む瞳美。

 

「唯翔くん!」

「俺も、会いたかった」

 

やっと想いが繋がったのに、新月はもう間もなく迫って……

 

 

 

いつもと違う特殊エンドで、ドラマチックな2人の抱き合うシーンで終わってしまいました。

時間がないからこそ素直になれた、という形ですが2人に残された時間はあとわずか。

 

唯翔との別れ、みんなとの別れ、文化祭は?

そして瞳美の世界は、いったいどうなるのでしょうか?