響け! 心に!!

なんで「響いたのか?」をしちめんどくさく考えてみる、メンドウな人の考察。アニメ中心考察予定です。

劇場版 響け!ユーフォ考察 コンクール編~想いは感染する~

 

  • この記事は、作品の具体的な内容に、深く、大きく関わります。

  「バレは困る!」という方は、残念ですが視聴後にご足労いただければ幸いです。

 

  • セリフはすべて聞き起こしです。

   間違いもあるかと思われますが、ご容赦ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・合奏練習のシーン

 

ここからは久美子は自分が主人公であることを思い出したかのように、苦しみます。

 

「黄前さん、そこ、難しいですか?

 本番までにできるようになりますか?」

「はい」

「本番でできないということは、全員に迷惑をかけることになりますよ。

 もう1度聞きます。

 できますか?」

「はい、できます!」

 

上手く吹けない部分を指摘され、練習を繰り返すも上手くいかない久美子。

ついには、死刑宣告が下されるのです。

麗奈と香織先輩のときのソロパート争いと、久美子が部分的に外されることとは、まったく意味の違うものです。

 

「田中さん一人でやってください」

 

滝先生も言いづらいとみえて、目を逸らしながらそう告げると、すぐに演奏を再開します。

 

言い返す間も与えられずに外され、ただ呆然とする久美子。

 

湧き立つ黒い雲に、蜘蛛の巣に囚われた喋が重なる。

 

しかし……

しかし、です。

その蝶の羽根はいまだ動いていて、強い光も射し込んでいるのです。

 

絶望に囚われても、いまだ久美子の意志は失われていなくて……

 

 

「上手くなりたい!」

「上手くなりたい!」

「上手くなりたい!」

 

「誰にも負けたくない」

 

あふれ出す想いで駆け出す久美子。

川にかかる橋の上での、振り絞るような絶叫。

 

「上手くなりたい!」

 

そう何度も繰り返し、絶叫する。

 

そこへ通りかかる秀一。

タイミングはバッチリです。

 

しかし……

秀一はあくまでも、車道を挟んだ反対側の歩道にいるのです。

 

「俺だって上手くなりたい」と叫び返す秀一。

けれどもこのシーンでは、秀一と久美子は合流しません。

 

すくなくともこの時点で、この映画において、秀一は特別というような何かではないのです。

上手くなりたいという思いは同じでも、その距離は遠く……

 

車道。

行き交う車。

歩車道境界の植え込み。

 

2人をさえぎるものの数は多い。

 

欄干に手をかけ、泣きじゃくる久美子。

 

鉄橋を渡る電車の響き。

流れてくる「地獄のオルフェ」。

 

やはりここでも久美子に思い出されるのは、『特別』なのだ。

「悔しくて、死にそう」

そんな麗奈の想いを、1年(くらいか?)遅れで理解する久美子だった。

 

 

この映画の作中で描かれてはいませんが、ここから久美子が必死で練習したことは言うまでもないことでしょう。

なぜならそれは、すでに麗奈が見せていることだからです。

 

 

「高坂さん、泣くほどうれしかったんだ。

 よかったね、金賞で」

「悔しい。

 悔しくって死にそう。

 あたしら全国目指してたんじゃないの?」

「え?

 本気で全国行けると思ってたの?」

 

床をドンと踏みつけて久美子を見下ろし、「あたしは悔しい、滅茶苦茶くやしい」

 

 

それからの麗奈は、どうしてきたのでしょうか?

私たちはすでに、それを劇中で目撃しています。

 

パート決めのシーンでは、教室の時間を止めています。

オーディションでは香織に「ソロは、高坂さんが吹くべきです」と言わせています。

なによりも自分を認めていなかった久美子に、ちゃんと認めさせているのです。

 

「香織先輩より、麗奈の方がいいって

 ソロは麗奈が吹くべきだって、言う。

 言ってやる」

 

 

それは必死の努力や、積み重ねた練習の成果。

おなじ特別であるなら、久美子にも、それができるはずです。

 

 

 

・夜の学校のシーン

 

このあたり、正直なところ初見ではちょっと唐突に感じたシーン。

前後のつながりからすると、唐突な気もします。

しかし、届けたいメロディを見たあとではよく理解できますし、そのための構成と思われます。

 

携帯を忘れ、取りに来た久美子。

滝が先に歩き、ついていく。

 

「小さい頃は父と同じ仕事に就きたいなんて、思ったこともなかったのですが。

 でも、選んだのはこの仕事でした。

 結局好きなことって、そういうものなのかもしれません」

 

「ですよね!」と同意する久美子。

 

次作、「届けたいメロディ」で大きく取り上げられる部分ですが、姉に憧れてはじめた久美子にしてみれば、滝の言葉が身近に感じられるシーンでしょう。

 

階段で滝の背中を追い、付き従う久美子。

この構図が、そのままのカタチでこの会話をあらわしています。

 

先を歩く、背の高い年長者。

それを追いかけ、あとに従うものたち。

 

先の高いところには、滝の父や、久美子の姉が。

それを追って、息子の滝や、妹の久美子がその背中を慕い、憧れ、ついていくのだ。

 

別れ際、久美子を励ます滝

「次の関西大会に向けて、練習しておいてください。

あなたの『できます』という言葉、私は忘れてませんよ」

 

見捨てられていないことがわかり、走り出す久美子。

 

あくまで京都府吹奏楽コンクールではなく、次の関西大会。

そんなに甘くはありません。

甘くはありませんが、それは大きな、とても大きな希望です。