響け! 心に!!

なんで「響いたのか?」をしちめんどくさく考えてみる、メンドウな人の考察。アニメ中心考察予定です。

劇場版 響け!ユーフォ考察 オーディション編~孤独からの解放~

 

  • この記事は、作品の具体的な内容に、深く、大きく関わります。

  「バレは困る!」という方は、残念ですが視聴後にご足労いただければ幸いです。

 

  • セリフはすべて聞き起こしです。

   間違いもあるかと思われますが、ご容赦ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・噂話が広まるシーン

 

 

 

・合奏の準備シーン

 

より大きな響きを意識させるため、部室に毛布を広げ、敷き詰めさせる滝先生。

このときすでに、「オーディションは高坂麗奈をソロにするためでは?」という疑念が、吹奏楽部内を覆い尽くしています。

 

毛布を音楽室の床に広げる。

吹奏楽部内に疑念が広がる。

 

2つは意図的な演出でしょうか?

それとも偶然?

 

オーディションについての疑義を、滝にぶつける優子。

執拗に滝に迫る優子。

 

「ひいきしたことや、誰かに特別な計らいをしたことは一切ありません。

 全員公平に審査しました」

「高坂さんと知り合いだったというのは?」

 

観念する滝

 

「事実です」

 

どよめく音楽室内。

 

「父親同士が知り合いだった関係で、中学時代から彼女のことを知っています」

「なぜ黙ってたんですか!」

「言う必要を感じませんでした。

 それによって指導が変わることはありません」

 

この状況に麗奈は我慢できません。

 

「だったら何だっていうの!

 先生を侮辱するのはやめてください!

 なぜ私が選ばれたか、そんなのわかってるでしょ!

 香織先輩より! 私の方が上手いからです!!」

 

叫ぶ麗奈。

 

「あんたね、うぬぼれるのもいい加減にしなさいよ!」

「優子ちゃん、止めて!」

「香織先輩があんたにどれだけ気を使ってたと思ってんのよ!

それをっ」

 

優子と麗奈は激しい口論になります。

 

「止めて!」という悲痛な叫びを挙げたのは、ソロパートに選ばれなかった香織先輩。

 

争いを止めるのは、なぜ部長の晴香ではないのでしょうか?

なぜ副部長のあすかではないのでしょうか?

 

選ばれなかった香織が、なぜ麗奈と優子の2人の諍いを止めなければならないのか?

 

それは残酷なシーンといえます。

 

1つには、去年の揉め事を思い出すということ。

1つには、自分で結果を理解しているということ。

 

ただ、その結果を納得し、事実を受け止め切れてはいないようですが。

 

 

 

滝先生に突っかかっていったのは、あくまでも吉川優子です。

麗奈と言い争ったのも、優子です。

 

それなのに麗奈は、問題を起こした優子にではなく、オーディションで蹴落とした香織に向かい、正面から言ってのけます。

 

「ケチ付けるなら私より上手くなってからにしてください」

 

自分から喧嘩を売ったわけでもないのに、そう告げられる香織の心中はいかに?

オーディションに負けているだけに厳しい一言で、つらく、苦しく、しんどいはずです。

 

音楽室を飛び出す麗奈。

追いかけるのは、特別な久美子。

 

 

優子のキャラクターを考えたら、事前に滝と高坂さんが知り合いだと公開されていても、おなじように揉めるでしょう。

人の心の公正さとは、残念ながら証明しようがありません。

信頼している人のこととは信用できるものです。

しかし、あまりよく知らない人のことを信用するということは、やはり難しいものです。

 

 

 

・藤棚の下、麗奈と久美子

 

この藤棚は、麗奈が「新世界より」を吹いた場所だと思われます。

あのときは『一部の生徒が先生の方針に反対して、どうするべきかを決めるまで練習しない』と、部員が滝先生に反発していました。

今回も、優子が滝先生にからみ、麗奈を知っていることをなぜ黙っていたのかと、滝を責めていました。

 

かつて、グランドを見下ろす高台から「新世界より」を吹いた麗奈。

そのときはただ一人で、叫ぶだけでした。

その叫び声に応える人はなく、孤独。

 

しかしいま、彼女は1人きりではありません。

 

飛び出した廊下で叫び声を上げこそしましたが、そのあとで受け止めてくれる久美子という存在がいます。

 

「ロクに吹けもしないのに、なに言ってるの?

 そう思わない?」

 

笑う久美子に、飛びつく麗奈。

 

「私、間違ってると思う?」

「ううん、思わない」

「ホントに?」

 

久美子がそこにいるから、麗奈は本音を口にして語ることができるのです。

ただ一人で思うことと、自分の想いや考えに共感してくれる人がいる、ということはまったく違うものです。

 

「わかってもらえて、よかった」

「やっぱりそうだよね」

「間違っていないよね」

 

想いを分かち合う、ということ。

自分の気持ちや意見に同意してもらえ、安心できた経験は誰にでもあることでしょう。

それだけでトラブルや不満が解決しなくても、ワンクッションおいて、ひと息つけることには大きな意味があります。

 

 

 

かつて『まだ何もない、新しい世界』だったそれは、大きく変わりはじめています。

麗奈にとっても、久美子にとっても、ひどい演奏をしていた吹奏楽部にとっても。

 

そもそもこうした争いが起こる(ソロパートを争う)とは、真剣さの表れです。

強い想いがなければ争う必要もないし、こだわりがなければ簡単に誰かに譲ってしまうこともできます。

 

北宇治の吹奏楽部に、麗奈が入部しない。

滝先生が赴任してこない……

であれば、こうしたことは起こらなかったでしょう。

 

しかしそれでは、真剣な部活動とは言えません。

 

久美子も逃げるようにリセットして、なんとなく全国大会出場を目標にしていて、でもやっぱりなんとなくで……

それではサンフェスでも、コンクールでも、確実に酷い演奏を披露する羽目になったはずです。

 

 

 

藤棚の下へと場所を変える2人。

感情が爆発した勢いと、久美子にわかってもらえた喜びからか、滝先生にLOVEだと自己開示する麗奈。

 

 

久美子の反応は、秀一に誘われたときとおなじで、間の抜けた感じです。

恋愛方面には疎いようです。

 

 

「ソロを譲る気は?」

「ない!

 ねじ伏せる。

 そのくらいできなきゃ、特別にはなれない」

「麗奈だね」

 

 

 

久美子は校舎裏であすか先輩が吹いていると思い込んで様子を見に行ったところ、夏紀先輩が吹いていてショックを受けたシーンで、こう感じました。

 

「先輩達と競い合わなければいけないことを怖いと思った」

 

しかし麗奈は久美子とは違います。

「先輩達と競い合」うことを気にも留めませんし、衝突を恐れず、「ねじ伏せ」ようとするのです。

 

 

 

さて、結果として香織が一番恐れていた、揉め事が部内に起こってしました。

しかも香織自身が当事者の1人として……