響け! 心に!!

なんで「響いたのか?」をしちめんどくさく考えてみる、メンドウな人の考察。アニメ中心考察予定です。

劇場版 響け!ユーフォ感想考察 届けたいメロディ~あすかの光と影~

 

  • この記事は、作品の具体的な内容に、深く、大きく関わります。

  「バレは困る!」という方は、残念ですが視聴後にご足労いただければ幸いです。

 

  • セリフはすべて聞き起こしです。

   間違いもあるかと思われますが、ご容赦ください。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

・パート練習

 

帰り道のシーンでは、あすか先輩のことで引っかかっていました。

帰宅後のシーンでは、姉の祝福の伝言をきっかけに嫌な雰囲気になります。

つづいて回想シーン、姉の言葉「あんたに関係ないでしょ」、久美子の「知らないし」というつぶやきで終わります。

 

それらを受けての、集中できていない様子を指摘されている久美子のシーンです。

 

「お姉さんに言ってごらん」

 

今度は学園祭のときと違い、直接的な発言でお姉さんぶる、あすか。

お姉さん、もとい、あすか先輩には文化祭以降、わだかまりを抱えていますから(コンクールなんてどうでもいい)、とても相談などできようはずがありません。

絡んでくる(頬を引っ張ったり)のは、姉の横暴っぽいところでしょうか。

 

 

 

・合宿のシーン

 

10回通しという、ハードな練習。

160分以上の継続練習。

 

全員ヘトヘトなのに、「20分か、ちょっと吹いてくるかな」と言って、さらに吹きに行くあすか。

まわりが呆れるほど、常軌を逸するほど、演奏が好き。

 

みんなで吹くことと、一人で吹くこと。

それはおなじではありません。

 

あすかにとっては、別の意味を持つことだから。

 

 

滝先生に、安定感が出てきたと褒められる久美子。

 

 

 

・寝床のシーン

 

隣で寝るのは麗奈。

 

いつか3年生がいなくなるなんて信じられないという気持ちを麗奈に語り、前振り、フラグをしっかり立てる久美子。

 

「麗奈はさ、トランペット好き?」

「当たり前でしょ。

 なに急に」

「あすか先輩に、おなじ事聞かれて」

「なんて答えたの?」

「あらためて聞かれると、怖気づいちゃう、みたいな」

「久美子らしい」

 

物語の中心の再提示。

 

ユーフォニアムが好きかどうか?

それがここで、眠そうな麗奈を相手にもう1度取り上げられます。

 

 

 

・翌日、早朝

 

「やっぱり枕持ってくればよかった」

 

よく寝つけず、起き出す久美子。

金色のユーフォニアムを抱いて外へ。

朝もやの高原に「きれい」とつぶやく。

 

すると、どこからか聞こえてくるのは、ユーフォニアムの音色だった。

登った階段の先の高台。

 

開けた草原には、朝陽を全身に受け、銀色のユーフォを吹くあすか。

幻想的な光景。

それを見つけた久美子は、目を輝かせて聞き入る。

 

この合宿へは、コンクールの練習のために来ています。

しかし、あすかが吹いているのはコンクールの曲ではないようです。

ゆったりとした、広がりのある響き。

 

「その曲はどこか不思議で、あたたかくて、さびしくて……

 幾重にも重なった感情が込められているようだった」

 

立ち尽くしたまま、あすかの演奏に込められた、なんとも複雑な気持ちを受けとる久美子。

 

 

 

このとき久美子は、階段を登り切りません。

近寄って話しかけるような、描写もありません。

つまり、あすかと久美子は、おなじ高さではないのです。

その差はわずかですが、『見上げる』形の構図でした。

 

 

あすかは開けた場所の中央で、1人吹いています。

朝もやのきらめく、まぶしい光景。

 

しかし、その表情だけは暗い。

朝の光の眩しさに背を向け、くっきりと影が顔に……

 

 

府大会に続き、関西大会も勝ち抜き、全国への合宿も集中して取り組めている吹奏楽部。

久美子自身も、滝先生に褒められていました。

 

しかし、あすかは1人、光と反対の方を向いているのです。

 

 

 

・駅ビルコンサートについて

 

元気がなく、考え込んでいるあすかに気づく、久美子

 

 

 

・教室のシーン

 

「バーンババン、バーン」と、ご機嫌な葉月。

「楽しいですよね」と言うサファイア。

ポジティブな感情の2人を教室で見せ、次のシーンを印象的にするための感情の高低差をつけます。

 

 

 

・職員室のシーン

 

職員室にたどり着いた久美子に聞こえてきたのは、大きな声を上げて非難するあすかの母でした。

 

クレームをつける、あすかの母親。

退部届を突き付けて、滝に受理を迫る。

 

「私は何があっても、その退部届を受け取るつもりはありません。

 その退部届は、お母さんの意志で書かれたものではないですか?」

 

滝の発言に反応し、顔を横にそむけ、身をよじるあすか。

あすかにとって嫌なシーンが、これからはじまる。

 

滝とあすか母の話は平行線。

 

「この子は私がここまで1人で育ててきたんです。

 誰の手も借りずに、1人で。

 だから娘の将来は、私が決めます。

 部活動はこの子にとって、『枷』でしかありません」

 

いや、エスカレートしていく。

 

「私は、本人の意思を尊重します。

 田中さんが望まない以上、その届けは受け取りません。

 なにがあってもです」

 

「あすか、この場で、退部すると言いなさい。

 言いなさい。

 いま、辞めるの」

「おかあさん、私、部活辞めたく――」

 

ピシャリと頬を叩く、母親。

 

「なんで私の言うことが聞けないの!

 あんな楽器吹いてるのも、私への当てつけなんでしょ。

 そんなに私のこと苦しめたいの」

 

激昂のあと、我に返り自己嫌悪する母。

だが、こうしたことはこれまでに何度もあるようだ。

 

「ごめんなさいっ。

 私っ、また……

 カッとしちゃって」

 

『また』なのだ。

この母娘のあいだでは、繰り返されてきたこと。

 

こんな状況に慣れているせいだろうか?

あすかは叩き返すような行動はとらない。

そして、「なにするのよ!」というような、怒りの声を挙げることもない。

ただただ冷静に、滝先生に部活を休むと告げる。

 

あすかは自己嫌悪からか、涙ぐむ母の手を引き、久美子の横を通り過ぎていく。

その表情には、やはり感情は見えない。

 

 

さっきまでは一方的にまくしたてた母と、居心地悪く立ち尽くすだけだった娘。

それが、一瞬で逆転しました。

叩いたことにより、肩を落として背を丸めちいさくなる母と、叩かれたことで真っ直ぐに立ち、母を先導して歩く娘。

 

あれだけ強気だった母親の姿はそこに無く、大人と子供が入れ替わったかのようです。

 

 

久美子はただ見守るだけで、なにもできません。

できようはずも、ありません。

 

 

 

このシーンではさらに、楽器(ユーフォニアム)に何らかの因縁があることが、母の口から改めて示されました。

 

……ということで、思い出される言葉。

 

「黄前ちゃん、ユーフォ好き?」

「私はね、好きなんだよ。

 コンクールなんてどうでもいいって思えるくらい」

 

 

 

・電車の中で話し合う麗奈と久美子

 

吹奏楽部に動揺が広がっていったことが語られる。

 

駅の前の道は、S字の道。

右カーブ、走る車。

吹奏楽部は揺れていく、そんな先行きの暗示。

 

「部活なんて、親が決めるもんじゃないし。

 受験だって進路だって、最終的には自分で決めるものなのにね」

「自分の子供が心配っていうのもあるんだろうけど……」

 

母親があすかを叩いたシーンを思い出し、ギュッと唇に力が入る久美子。

「けど」のあとにセリフはないが、強い反発を覚えた様子。

 

「どうかした?」

「ううん」

「でも、あすか先輩って、どうして部活続けてるんだろ。

 3年生で受験もあって、お母さんにここまで反対されてるんでしょ」

「部活が好き…だから?」、と首をかしげて言う久美子

「そう?

 あの先輩、とてもそんなふうには見えなかったけど。

 どちらかと言うと自分が吹ければいい、みたいな感じだったし」

 

いつもは麗奈が言うように「自分が吹ければ」に思える。

しかしそれとは正反対な、関西大会の前のあすかの力強い一言が引っかかる久美子。

 

「あすか先輩は、わからないよ」